残念ながら映画館に見に行けなかった「ヤング@ハート」をやっとDVDで見ることができた。
どんな作品なのか知らない人も大勢いるとは思うが、簡単にいうと「アメリカのある街に生まれた老人によるコーラスグループのドキュメンタリー映画」だ。
こう書いてしまうととてもつまらない。
でも見終わると、すごく元気をもらえる映画なのだ。
そもそも「老人によるコーラスグループ」というあたりで、見るものの先入観が破壊される。
普通の日本人が考える「老人のコーラスグループ」っていったらなんだろう。温泉のバスツアーとか、カラオケサークルとか、そんなものだろうか。
でも彼らは違う。なんと「ロック」。
平均年齢80歳を超えた彼らが歌うのは、Crashだったり、Bruce Springsteenだったり、Jimi Hendrixだったり、Talking Headsだったり、Coldplayだったりするのだ。
それも適当に歌って楽しい、と言うレベルではなく、プロとして劇場で歌えるレベルまで練習し、実際にヨーロッパツアーを始め各地で公演し、彼ら自身「俺たちプロだからね」と言わしめるほど。
当然寄る年波には勝てず、何度練習してもうまくいかないものはあり、また若き指導者(と言っても53歳)の厳しい指導によって、予定された演目から外される曲もあるようだ。
でも当初はとても無理だと思われた曲を、指導者のきついことばにも耐えながら(ほんと高齢者に対してもびしびし指導してます)何度も繰り返し練習することでマスターしていく姿は感動的である。
彼らにとっては歌うことがすべてであり、人生でもあるのだ。
だからこそ途中で病気になっても、驚異の生命力で復活してきたりする。
本当に彼らの姿は生き生きとしている。実際の刑務所慰問のシーン、コンサートのシーンなどを見ると、その力が観客に伝わっているのが非常に良くわかる。
ただ残念なのは、はやり彼らが高齢であること。
このドキュメンタリー撮影中にも、重要メンバーが相次いで病死してしまう。あんなに楽しそうに練習していたのに、コンサートを楽しみにしていたのに、無念だろうなあと思う。ほかのメンバーたちも、悲しみに暮れることなく、元気に歌うことが彼らのためになることだ、と言って舞台に立つ。
コンサートで一緒にColdplayを歌うはずだった相棒を亡くしてしまった老人もひとりで歌い上げるが、彼もまた酸素吸入器なしでは生活できず、医者から告げられた余命を既に過ぎているのだ。
最後、エンドロールで悲しいニュースも告げられるが、全体的に「見てよかった。元気がもらえた。」と思えるいい映画であった。
できるだけ多くの方に見て欲しい作品である。