「20年に一本の恐怖の作品」とキャッチコピーがつけられている映画「ドント・ブリーズ」を観てきました。
邦題を「ドント・プリーズ」と見間違えてしまう人もいるかもしれませんが、原題を見れば明らかな通り「息を止めろ」。
内容的には、「ドント・プリーズ」でも違和感はないかもしれませんね。
ストーリーとしては、3人組のケチな盗人仲間が、盲目で一人暮らしの老人が大金を家に隠し持っていることを知り、それを盗みに行こうというもの。
唯一の女性には家庭の事情で、地元を離れたいという強い思いがあります。
舞台はデトロイト。
デトロイトというのは絶妙な舞台設定だと思います。
一時期は自動車産業で活気あふれた都市が、今となっては産業も衰退して人口も減り、街は荒れ放題。治安も悪い。
解説を読むと、消防士は1500人、警官はたった1000人しかおらず、通報してからパトカーがやってくるまでの平均時間は約50分とのこと。
つまりこの街で暮らすには、自分のことは自分で守るしかないということになります。
そんな都会で、周りが廃屋ばかりの中、盲目の老人が大金を隠し持ったまま一人で暮らしている、となれば強盗からすれば格好のターゲットとなるでしょう。
しかしそのターゲットが単なる「盲目の老人」ではなかった。
元軍人で、イラクで負傷し失明したものの、聴覚、臭覚など研ぎ澄まされた能力を持っており、大した技量も持っていない若者3人はあっという間に追い詰められます。
老人にしてみれば目は見えなくとも住みなれた我が家。
杖がなくとも家の中を縦横無尽に歩き回りますが、若者にとっては初めての場所。
追いかけてくる老人とばったり出会った時は、まさに「息を止めろ」。
呼吸する音でさえ、聞かれてしまえば終わりです。
地下室では灯を消されてしまえば暗闇。でも盲目の老人には明かりは必要ありません。
この辺りの緊迫した空気感が「恐怖の作品」ということなのでしょう。
ここまでの話なら、ある意味「座頭市」にも似た印象を持つ方もいるかもしれませんが、老人にも公にされたくない事情がありますが、老人が語るその事情は普通の人には理解しづらいものでしょう。
老人も決して単なる被害者ではありません。
誰も善人はいないということになりますが、個人的にあのラストは気に入りません。
老人が犯した罪は単に我が子を殺された「復讐」以上の行為であり同情するわけではありませんが、戦地で失明し、子どもも殺され、金まで盗まれてしまう。
盗んだ側は、結果として金を独り占めして目的を果たす。
老人自身が語っていた通り、世の中は不公平だ、ということをテーマにした作品であれば、このようなラストでも仕方がないかもしれませんが、見る人によって感じ方が分かれるところだと思います。
作品としての出来は、「20年に一本の恐怖の作品」は言い過ぎかと思います。
もっとハラハラするような、もっとドキッとさせるような作品だと思い込んでいたため、少し身構えていた感はありますが、そういう点では期待はずれでした。
つまらないわけではないが、淡々と話が進んでいく。そんな話です。
個人的には、10点満点で4点くらいかな。