友人から勧められていた「アイ・イン・ザ・スカイ」をやっと観にいくことができました。
「やっと」というのは、この作品の評判にも関わらず上映館が限られていること。
いつも新宿で映画を見るのですが、銀座まで行くことになりました。
休日ということもあり、あまり広くない映画館は満員。
話は、ドローンや諜報員らの情報により、国際手配していたテロリストの首謀者を発見。
さらにその家には、次のテロを行うべく自爆ベストや爆発物の用意が整っており、すぐにでもテロを起こしかねない状況であることが判明する。
ドローンに搭載したミサイルでその家を破壊できれば、テロの首謀者の殺害と次の自爆テロを防ぐことができる。
ところが、その家のすぐそばに少女がパンを売りに現れてしまい、ドローンによる攻撃を行うことで少女まで巻き添えで殺してしまいかねないことがわかる。
自爆ベストは2着あり、それを身につける人物もすでに到着している。
すぐに行われるであろう自爆テロでは、どれくらいの人数が犠牲になるか、全く予想できないが、数十人の死者が出る可能性もある。
しかもテロを指揮している重要人物を殺害できれば、テロ組織にも大きなダメージを与えることができる。
一人の少女を救うために攻撃を止めるべきなのか。
次のテロで多数の死者が出ることを防ぐべきなのか。
軍人からすれば、当然攻撃すべきと考えるが、それを決定する政治家は簡単には結論を出すことができない。
散々たらい回しにして、時間が経過していく。
ついに室内を監視していた小型ドローンのバッテリが切れてしまい、中の様子もわからなくなるが、政治家は決断を下せないまま。
現場を指揮する軍人は、強引とも言える手法で攻撃を許可させてしまうが…….。
テーマとしては、現代の戦争の現状を的確に描写しているものだと感じます。
副題で「世界一安全な戦場」とあるように、ドローンの操縦士は現場からはるか彼方にいるわけで、自分自身が攻撃されて戦死する可能性はゼロ。
しかし、自分がトリガーを押すことで、罪のない少女が死んでしまう。
実際にドローンによる攻撃が、技術の進化とともに日常的に行われるようになり、「成果」をあげつつも民間人の被害も少なくありません。
ドローンの操縦士も過度のストレスで辞めていく者も多いと聞きます。
しかし、この映画の設定のように、そこにテロ首謀者がいることが確実で、しかももうすぐ自爆テロが起こることもわかっている状況であれば、政治家があのように責任を負いたくがないために決断をたらい回しにして時間を無駄にする、ということがあってはならないと考えます。
まさにこの映画の設定通りの状況であれば、迷わずミサイルを発射すべきでしょう。
と言いつつも、ドローンによる攻撃を賛成するわけではありません。
勝手に他国に侵入して攻撃し、関係ない人も巻き込んで殺してしまう。自分は100%安全が保障されている。
この映画のように「分かりやすい」状況というのは実際にはそれほどないでしょうし、自分自身への攻撃に対する反撃でもないのに、スイッチ一つで人を殺せてしまうことへの葛藤は体験した者でないと理解できないものなのだろうと思います。
現在はテロを起こす側も、それを抑え込もうとする側も、それなりの技術や通信手段を持っていますし、「戦争」で民間人が巻き添えになることがあるのも仕方がないことなのでしょうが、虚しさも感じます。
もともとテロを起こす要因を作ったのは誰なんだよ、という問題もありますが、現実社会ではすでに火がついてしまったので、強引に火消ししようにも必ず無理が出てきます。
現代の戦争のあり方を考えさせる作品でした。
ドローンの操縦士の役者は見覚えがあるなあと思っていたら、あの有名なテレビシリーズ「ブレイキングバッド」に出ていた人なんですね。
俳優陣は素晴らしかったけど、前半はちょっと退屈。ちょっと眠気を感じました。
なので、個人的には10点満点で6点かな。